「ご飯を食べると馬鹿になる。」慶応大学医学部某教授

 1971(昭和46)年、日本マクドナルド1号店を銀座三越に出店した初代社長藤田田氏は、9歳までに人の味覚は決まるから、ハンバーガーを先ず9歳以前の子供達に食べさせることで、その消費量を拡大したいと公言していた。和食ではない、牛肉を中心におくハンバーガーを主食にして生きていく日本人を育て、アメリカと同様の食文化を日本に定着させたい。ご飯や味噌汁や漬け物は、時代遅れの、日本にしか通用しない食文化だと藤田社長は確信していたようだ。

 それ以前には「ご飯を減らしてパンを食べよう」運動、「味噌汁よりも牛乳がよい」運動もあった。主食がパンになれば当然、人ば味噌汁を敬遠して牛乳を飲むものだ。完全にこれらの運動宣伝は連動していた。「ご飯を食べると馬鹿になる」と断言する研究者が慶応大学に現れた。味噌汁は高血圧の原因になると宣伝され、保健所栄養士が各家庭にまで入って指導をした。和菓子より乳脂肪分たっぷりの洋菓子の方が高級イメージになった。魚の料理は面倒だ。肉と砂糖の消費量が増えるのと反比例して、お米の消費量はかつての半分になっていった。そして、小児成人病(今は「生活習慣病」とぼかされている。)の激増に続いて、20歳台30歳台、或いは更年期の女性の乳ガン・子宮がんが激増し始めた。この40年の間の生活様式(運動不足・夜更かし)と食習慣の洋風(高タンパク・高脂質)化が日本人の病気の風景をも激変させた。

 1977年アメリカ議会上院は、医療費があまりに増えすぎていく現実を真剣に調査分析して、国民の健康対策・医療費抑制策として、日本の伝統食がよいと言い出した。その調査報告書では、「1日のエネルギー摂取の6割を炭水化物にする」ことが推奨されていた。これは、日本流に解すれば「毎食ご飯を食べよ」と言っているようなものだ。そして1993年にはアメリカ政府が「アジアの伝統的な健康食」を推奨し始め、アメリカ国内では、すしや魚料理のレストランが大繁盛し始め、増加するばかりだったガン死亡者数を減少に転じさせるのだ。

 遅れて、医療費の高騰が明らかになるや、日本政府もアメリカの和食重視方針に追随する。2005(平成17)年6月のことだった。食事面での伝統回帰は、もはや日本人にとって死ぬか生きるかに拘わる重大な課題となっている。「美味しければよいではないか。人が好んで選んでいるのだから、自己責任で済ますしかないではないか。」という言葉を吐く人は、砂糖一杯の甘味飲料・覚醒剤・タバコや売春(援助交際)についても、同じ論法が成り立つことに気付いているのだろうか。

 社会館保育園給食室は、日本政府の方針逆転を是とし、今まで同様に魚料理を重視し肉料理を注意深く使っている。2008年度より、たくさんの野菜を具にした味噌汁を毎週1回は出し、3歳のワニ組以上は三芳村からの配給野菜が余った時には、クラス独自で味噌汁を作っている。納豆を嫌いな子供がいることに気付いた2008年からは毎月1回納豆を出すようになり、主食は明らかにご飯が合う献立が多くなっている。日本のパンがヨーロッパの丸パン・フランスパン・黒パンとは違う、砂糖やバターがまぶされたお菓子のようなパンになっていること、市販の牛乳の多くが100度を超す高温殺菌を受けている、ヨーロッパの常識では「牛乳ではない牛乳」となっていることも、園長宮崎が明らかに知る所となった。2歳以下の子供達の牛乳が、マザー牧場の低温殺菌牛乳になって久しい。請西の森の分園の下の田んぼの減農薬米を、2009年秋から時々、3歳以上児が食べるようにもなった。社会館に設置された精米機で、子供達が見ている前で精米がされるのだ。